月刊木村:清須市で営む塾での日々

相伝学舎という塾を経営しています。好奇心の格差時代に、大学受験を通じた成功体験の場を提供することが使命です。

五条高校の生徒が3年間しっかり勉強して国立大学医学部に現役合格した話 1

相伝学舎の第一期生で、浜松医科大学医学部医学科に合格したKさん(五条高校)の合格までの軌跡をご紹介します。

普通、高校の合格実績一覧に「東京大学2名」とか「名古屋大学15名」とか書いてあっても、学部までは分からないうえ、合格した生徒が実際にどういう勉強をしていたのかが明らかにされることはありません。とくに高校の合格実績とは「高校に在籍していた生徒」の合格実績であって「高校の指導通りに勉強していた生徒」の合格実績とはかぎりません。とくに学年の上位1割未満しか合格できないような大学に進学していく生徒は、高校の指導に頼らない勉強をしている割合が高いのではないかと私は考えています。

国立大学の医学部医学科というのは、センター得点率ボーダーが90%、河合塾偏差値が65以上で、かなりの地方であっても東京大学の理類と同程度の学力が必要になるところが多いです。Kさんの合格した浜松医科大学は国立大学のなかでは都市部よりなので、国立医学部のなかでも難易度は高いほうです。

国立大学医学部の受験の難しさは、必要な学力が高いという点のほか、1年で2校しか受験出来ないという制約にあります。国立大学医学部は6年間の学費が400万円以下であるのにたいし、私立大学医学部は最も安いといわれる慶應大学医学部でさえ2000万円で、すでに国立大学の5倍です。愛知県でいうと藤田保健衛生大学は3600万円で、国立大学の10倍近くになります。

親が開業医や会社オーナーでないかぎり医学部を目指すとしたら国立に絞られます。国立は前期と後期の2回出願できますから、2回の受験チャンスがありますが、後期はかなりの混戦となり狙って合格できるようなものではありませんから、前期一発勝負で後期はほとんどダメ元での勝負になります。

医師になりたいと思っても、私立は学費が高すぎる、国立はレベルが高すぎる、となってそもそも挑戦する前に諦めてしまう生徒も多いのではないでしょうか。

滑り止めなしの一本勝負に挑戦しようという勇気を持った次に立ちはだかるのが、どうやったら合格者レベルに達せられるのかわからない、暗闇で突っ走る不安です。愛知県でいえば滝高校や東海高校からなら、国立医学部に合格する生徒がひと学年に数十人単位でいるのでイメージがつくかもしれませんが、公立高校の場合、一宮高校でも国立医学部に合格できる生徒はかなり少ない(たぶん年間で2-3人くらいでは)はずで、合格するにはどうしたらいいのか実感をもつのがきわめて難しいです。医学部受験は、一宮や岡崎等のトップクラスを除く公立高校に進学している時点でほとんど詰んでいるといっても良いでしょう。

実際、五条高校から国立医学部に現役で合格した生徒というのは十数年ぶりらしいですし、Kさんが入塾前面談で医学部志望だと話してくれたときの私の最初の感想も「公立高校から医学部に現役で合格したやつなんて見たことねーよ」というものでした(笑)。

それだけに、Kさんの国立大学医学部合格の持つ意味は大きいです。公立高校の生徒がどのようにして医学部レベルの学力を手に入れていったのか、blogである程度のことは伝えていけます。五条高校の生徒のみならず、愛知県の公立高校生にとって参考になることを願います。

本編に入るまえに、だいぶもったいぶりましたが(笑)、現役で国立大学の医学部医学科に合格することがどれだけ大変なことかを分かってください。

それではまずは、本人に受験生活を振り返ってもらった体験談をご紹介します。

 

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英語でセンター160点なら3冊

私の英語の指導ではセンター160点までなら必要な参考書は3冊で済ませます。速読英単語が1冊に、英文解釈の参考書が2冊です。単語帳は受験が終了するまで何周もとりくんでもらって、英文解釈のほうは10ヶ月くらいかけて3周やってもらえば、読めない英文はなくなります。

センター英語の後半は英語が読めさえすれば落とすことはないので、長文問題で失点を防いで前半の文法問題で知っているものだけ正答できれば160点にはいきます。

さらに180点を目指そうとしたら、文法の参考書を2冊ほど仕上げてもらいます。

英語において文法問題というのは高校生の勉強のメインどころであるのに、案外出題されません。長文を正確に読めさえすれば、だいたい合格点にはのせられます。なので、私は文法問題を授業中にやらせることはないし、センターで9割欲しい生徒を除けば参考書も紹介しません。あ、でも去年は英文解釈の参考書を3周やりきってしまってやることが無いという生徒に文法の参考書を紹介しました。

英語だけでなく、他の科目も必要な参考書というのは5冊以下くらいのものが多いです。大事なのは、何周もして理解を深めることです。

塾や予備校にいかずとも、受験科目数×1万円くらいの出費で大学受験はなんとかなってしまいます。実は。

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コロコロかえちゃだめよ

ちょっとやる気が出た高校生のやることといえば、本屋さんで大学受験の参考書コーナーをうろつくことでしょうか。有名な参考書をふくめ、なんとなく学力が上がりそうなタイトルのものが何冊も目に付くことでしょう。

大学受験で陥りがちな失敗は「参考書をコロコロ変える」です。これをやるとまず学力は上がりません。コロコロ参考書をかえることで、どの参考書からも表面的な知識しか身につけられない、というのが表面的な説明になるのでしょう。

しかし、本質的には参考書をかえるという行為にあるのではなく、そうしたくなってしまう考え方に問題があるように思えます。

参考書にとりかかる→2週間くらい取り組んでみたが学力が上がる実感がわかない→これより良いものがあるんじゃないかと不安になる→新しいものに手をだす

というのが、参考書をかえてしまう人の考え方でしょうか。一方、参考書を変えない人は

参考書にとりかかる→2週間取り組んでみたが学力が上がらない→そんなものだと思って我慢して続ける→2-3ヶ月後になんとなく出来てきた感がする→半年かけて2周してめちゃくちゃ偏差値が上がる

というサイクルを回しています。

どこに境目があるのか?それは、過去に成功体験を持っているかどうか、というのが私の現時点での予想。

学力とはある閾値を超えた段階で急激に伸びるもの、という成功体験があれば1ヶ月やそこらで結果が出なくとも継続できます。が、そういう経験が無い人というのはこのまま時間切れになってしまうのではないかという不安におちいるのでしょう。

勉強ではなくてもいいから、我慢の時期がある成功体験を15才までにしていてほしいです。

 

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経済学部を数学受験すると合格しやすい?

文系の生徒は日本史・世界史を選択する生徒が多いですが、経済学部や商学部だとほとんどの大学で数学を選択できます。

結論からいうと、数学受験のほうがラクだと私は思います。

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(河合塾 入試難易ランキング http://www.keinet.ne.jp/rank/ より)

河合塾のランキングをみてみると、慶應の経済学部でB方式は70.0にたいしA方式は67.5です。Bは歴史受験で、Aは数学受験です。1ランク違います。商学部も数学が必要なB方式のほうが難易度が低いです。上智大学も、経済学部経営学科が社会・数学からの選択にたいして経済学部経済学科が数学のみの選択で、やはり経済学科のほうが1ランク低くなっています。

私の経験でいうと上智大学の経営学科は不合格でしたが、経済学科は合格しました。今年の高3の結果をみても、歴史受験より数学受験の生徒のほうが合格している印象があります。

入試には補欠合格という制度があって、合格最低点に届かなかった人を補欠合格としておいて3月中旬以降に繰り上げて合格させるものなのですが、慶應の補欠合格をみていると歴史受験のB方式よりA方式のほうが2-3倍くらいの補欠合格者を出しています。

経済学部はミクロ経済や統計で結構数学を使うので、大学側としても数学受験者のほうをとりたいんじゃないかと思います。

生徒には最大限レベルの高い大学に行って欲しいので、文系であっても1年のうちから数学に一番時間を費やすよう指示します。数学が出来るだけで、人生がものすごく切り開かれますよ。私は数学に救われました。

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分かると出来るの間には距離があるよ

新高1の春期講習は、中学の数学と高校の数学が完全に別モノであることをわかってもらうことに集中しています。

「野球とサッカーくらい違うからな〜チャート5回繰り返せよ〜」

と口でいっても、その通りにやってくれるとは限りません。というか、やってくれません。昨日今日と、これまでに教えた19題の例題を演習させていたのですが「何も復習してないだろ!」と突っ込まざるを得ない程度に、ボコボコです。

5回繰り返して身につけるという感覚を早期に習得してもらうためにも、最初のうちは勉強に積極的に介入します。展開と因数分解というのはそこまで難解ではありませんが、ここで「繰り返し演習して意味を理解すること」の意味を実感できれば道のりが一気に明るくなります。

たとえば因数分解の手法は、共通項をくくり出す、たすき掛けをする、次数の低い文字に着目して整理する、3乗の展開公式の逆をする、と手数は限られています。その一つ一つを授業で聞いて「わかる」というか「分かった気になる」というのは、中学時代まあまあ成績の良かった生徒にとっては難しいことではありません。

しかし、授業を聞いて「分かった」という感覚が実は「分かった気になった」だけであるということに気づけるかどうか。それは、5回繰り返し復習していくなかで、4回目とか5回目でやっと実感できることです。

「合っていた問題も5回繰り返すんですか?」

YES!よほど簡単な計算問題を除けば、2回目くらいで正答できたことにたいして意味はなく、問題を見てから答えにいきつくまで呼吸するヒマもないくらいサラサラ解けるという状態になるまでは、「出来るようになった」と私は定義しません。

サラサラ解けるという状態になると、問題を見る目が変わってきます。

好きな映画を2回、3回見ていくとだいたいのストーリーが頭に入っているので、ストーリーの細かいところとか、伏線の関係を楽しめるようになるでしょう。数学も同じです。繰り返していくうちに、前後関係が読めるようになります。

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