月刊木村:清須市で営む塾での日々

相伝学舎という塾を経営しています。好奇心の格差時代に、大学受験を通じた成功体験の場を提供することが使命です。

大学受験、直訳か意訳か 2

大学受験の英文和訳問題は、「構造理解」「英文中での意味の理解」「知らない単語の推測」に気をつければ失点することは考えにくいです。色々な大学が「そういう観点で採点してますよ」ということを公開しているからです。

この3点でいうと一番大きいのは「構造理解」です。to不定詞の用法はなにか、分詞構文と動名詞の違いが区別されているか、主語と述語は正確に読み取れているか、andのつなぐものに間違いがないか。

構造理解が出来たうえで、英文中での意味や知らない単語を推測することができて得点出来るのであって、いくら単語の意味が正確でも主語を取り間違えていたらそれは大幅減点になると考えて差し支えないはずです。

For example, a recent study analyzed commercials  to see whether any change had occurred since the 1980s.

という英文に対する訳で

「たとえば、最近の勉強は広告に1980年から変化があったかどうか見るものだ」

という思い切った訳、これはもちろん0点ですが、訳の日本語をみると「勉強は・・・見るものだ」となっており、"a recent study"にたいする述語動詞にto seeをとるというめちゃくちゃな解釈になっているから大幅減点。訳語も不適なものがあるので0点になります。

「たとえば、最近の研究は、1980年代から変化が起こっていたかどうかをみるために、コマーシャルを調べた」

これならa recent study(=S) analyzed(=V) commercials(=O) to see(=副詞用法「目的」)が理解できているので、英文解釈における減点はなく、あとは細かい訳語で数点減点されるかどうか、となります。

ではto不定詞の副詞用法「目的」を前から訳して

「最近の研究はコマーシャルを調べて、・・・ということを理解しようとした」

としたら、どうでしょうか?

日本語では「調べて・・・理解しようとした」と書かれた場合、「理解しようとした」ことが「調べる」ことの目的であると読み取れるので、英文の意味は正しく和訳されています。しかし、to不定詞の副詞用法「目的」は、「〜するために」と習っている高校生が大半であり、意味を考えれば前から訳すことも出来るということを知っているのは英語が好きでそれなりに学力が高い生徒の話です。

私なら、前から訳された解答は生徒によって採点をわけます。

というのも、なんとなく読みの達人、雰囲気読みの達人であれば

a recent study(最近の研究・・・)analyzed(分析した)commercials(コマーシャルを)to see whether-(-かどうか理解する)

=「最近の研究はコマーシャルを分析して、-かどうか理解しようとした」

と訳せてしまうからです。英語力のある生徒も、無い生徒も同じ訳に行き着いてしまう可能性があるのが、to不定詞の副詞用法「目的」です。

だから、英語の学力が高い生徒ならマルにするし、低い生徒ならバツ。

ただ、私が受験で英語の試験を受けたとして、ちょっとおしゃれに前から訳すかというと微妙です。上に書いた通り、とてつもなく理解していないと思われる可能性があるからです。

大学が合格させたいのは、うまい訳を作れる学生じゃなくて、英語の論文を正確に読んで自分の研究に役立てられる学生です。翻訳家を養成する場じゃなくて、あくまで研究の場ですから。

「うまい訳できますよ」ではなく「英文法を正確に分かってますよ」ということをアピールできる答案をつくることを心がけるでしょうね。

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清須市の大学受験 相伝学舎
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