25〜34歳の男子700万人のうち104万人がおそらく現状に大きく満足することはないであろう雇用形態で働いています。では、大卒なら安心なのかというとそうとも言い切れないと思うんですよ。
ここから先はデータではなくて感覚で話を進めていきますが、大卒であっても卒業時に新卒として正社員になれなかったりとか、もしくは一社目をすぐに辞めてしまってそれ以降非正規だったりとか、大学を卒業してもいくらでもそういうケースはあります。
極めてレアケースだとは思いますが、東大卒であってもそうなることがあるのですから。
日本の社会においては、いったんこぼれ落ちると、もとのレールに戻ることが難しい構造になっているのだと思います。
新平等社会―「希望格差」を超えて (山田昌弘、文春文庫)という本の243ページにこんな図があります。
この本ではレールをパイプラインにたとえていて、高校や大学等でレールから外れることを、パイプラインから「漏れる」と表現しています。うまい表現だと思います。
ちょっと引用します。
ニューエコノミーでは、物作り主体のオールドエコノミーとは違って、商品やシステムのコピーが容易である。そこで生じるのが、コピーのもとを作る人と、コピーをする人+コピーを配る人への分化、マニュアルを作る人と、マニュアル通りに働く人への分化なのである。それは、将来が約束された中核的、専門的労働者と熟練が不要な使い捨て単純労働者へ、職業を分化させる。そして、グローバル化による競争激化や金融危機がその傾向を加速させる。そして、その影響はまず、若者を直撃する。
企業は、若者を選別して、能力のあるものは中核社員、専門的社員として優遇し、それ以外は、派遣、アルバイトなど身分保障や社会保険負担のない労働者で置き換えようとする。その結果、非正規雇用者が大量発生する。それが、日本では、フリーターの増大として現れるのだ。
一方で、旧来型の産業・職は、徐々に衰退局面に入る。工場はアジアに移転し、メーカーは工員を大量に採用しなくなる。IT化は、営業や事務、販売職の(熟練を前提とした)正社員を不要にする。
平たく言えば、新しい価値を作る創造的な人には仕事があるが、作られた仕事を回すしか能力の無い人の仕事は待遇が悪くなるということであり、これは日本のマクロ環境からしたら今後も変わることはない、悪化することはあっても良くなることはないでしょう。
この状況は、今の中高生たちは本当に自分の問題としてまじめに向き合ったほうが良いですよ。ちゃんと勉強しておかないと、22歳の時点で社会人としてのスタートラインさえまともにたてないということが十分ありえます。
もちろん就職がダメでも打つ手はいくらでもあります。でも、公立高校生というのは良くも悪くも小中の9年間、レールに乗っかって従順にやってきた人間です。実際にそうなったときにどれだけ前向きにやっていけることか。私だって今でこそレールから外れて自分で商売して生活していますが、仮に就活に失敗していたらどうなっていたかわかりません。
社会人としての第一歩は多くの人にとって就職活動で決まり、その就職活動は学歴によって同じ就活とは思えないほどの違いがあり、その違いを産む学歴というのは高校3年間の勉強によって決まります。
ショボい大学にしか受からなかったら負けだ、くらいに思ってやったほうがいいですよ。