月刊木村:清須市で営む塾での日々

相伝学舎という塾を経営しています。好奇心の格差時代に、大学受験を通じた成功体験の場を提供することが使命です。

模試は素点を見るな

模試結果を持ってきてくれた生徒が「英語が下がっている」と言っていました。普段、英語の授業でみている限り英語の学力は一山越えて踊り場にいる様子ではあるものの、学力が下がるような勉強はやっていないので、下がっているというのは何かの間違いだろうと思って結果を拝見したら、やっぱり下がっていませんでした。

前回マーク模試で154点だったのが135点になって下がったと判断したようです。確かに、その2つの点数だけみれば下がったと言えるかもしれませんが、全体を見れば今は横ばいです。

私が生徒の模試結果を見るときに一番見るのは校内順位です。同級生350人という母集団全体の学力は、大きく上がったり下がったりすることはありません。その母集団のなかで順位が上がる、もしくは下がるということは勉強の結果が出ているかどうかの判断基準になります。また、ある高校のひと学年350人の学力は年度によって大きく変わらないので、学年上位1割にいればだいたいどこの大学が射程距離になるか、前例から判断することもできます。

偏差値は、実は結構やっかいものです。まず進研と全統では母集団のレベルが違いすぎて同じ偏差値60でも価値が違うし、同じ模試でも毎回母集団レベルが変わってくることが予想できます(年度後半になるにつれ受験者数が増えることによって)。だから、母集団レベルが大きくブレない校内順位は役に立ちます。

校内順位の次に志望者順位を見ることもありますが、そもそも大学の過去問題とは異なる問題を解いての順位はそこまで参考になりません。志望者順位は、気休めと発憤材料としての役割しかないと考えています。

というわけで、その生徒の過去数回の模試結果と比較して眺めたところ、校内順位が大きく下がったわけでも上がったわけでもなくとくに問題なしの横ばい、というのが私の結論でした。

清須市の大学受験 相伝学舎
http://www.sodeng.jp

英語の基礎は、単語と文法を覚えることではない

数学の基礎が「簡単な問題を解けること」と勘違いされているのと同じように、英語もまた基礎に関する勘違いがあります。それは「単語と文法を覚えて、長文問題に取り組む」ということです。これは明らかな勘違いです。

この勘違いもまた、中学時代の勉強習慣から来ています。高校入試を思い出してください。教科書の単語と文法を覚えたあと、何をしましたか?もう一冊くらい文法の教材に取り組んだあとで、長文問題や過去問題に取り組む、そんなところでしょう。たしかにこれで入試問題は解けてしまいます。高校入試に正確な英語読解力は不要で、なんとなく単語が分かれば読めてしまうからです。

これと同じノリで、大学受験でも学校で渡された単語帳を覚えて、高校入試よりは分厚い参考書を暗記して、あとは長文問題の参考書を取り組んで・・・と英語学習の見通しを立てていることはありませんか?

英語の基礎とは、単語と文法を覚えることではありません。英文構造を正確にひもとく能力のことが、英語の基礎です。

そのなかでも最も大切なことは、主語と述語動詞の見抜き方です。これが簡単なようで意外と難しいのです。次の英文を読んでみて下さい。

 The fact that in half the countries of sub-Saharan Africa the survival rate to the last grade of primary school is 67% or less is not irrelevant to prospects for overcoming the region’s marginalization in the global economy.

主語は簡単で、The factです。主語は文の一番最初に出てくる、前置詞のついていない名詞です。The factが主語でその次のthatはThe fact that(S+V)で「(S+V)という事実」、という意味になる同格接続詞です。The factという名詞が同格接続詞を導く名詞だと分かっていれば一発で見抜けますが、知らなかった場合はthat節の構造を見れば判別可能です。

では、The fact以下に述語動詞となりえそうな、一見動詞にみえるものを探してみましょう。

survival, rate, is, is, prespect, overcoming

「いや木村さん明らかにsurvival, rate, prospect, overcomingは選択肢にならないでしょう」というツッコミをしたあなた。あなたは優秀です。しかし、これを高校生に読ませると文が長いがゆえに、冷静に考えれば動詞ではないものもなんとなく動詞に読んでしまう、おそろしい話がこの世にあるのです!

文の述語動詞を見抜くにはthat節がどこで終わるかを理解しなければいけません。that節は

 in half the countries of sub-Saharan Africa

はin half A「Aの半数で」という副詞で、

the survival rate to the last grade of primary school 

がSです。

is 67% or less

がV,Cにあたり、SVCで節が閉じました。

ということで、文の動詞はその直後の isであることがわかります。

The fact is nor irrelavant.(事実は無関係ではない)

というSVCが文の骨格だと分かりました。

主語と動詞の判別以外にも、等位接続詞のつなぐもの、動名詞と目的語、複雑な比較、副詞→副詞句など、読解方法を訓練しなければならないポイントはいくつもあります。しかし、こういう勉強を取り組む生徒は少ないし、そもそもこういう勉強があることを知りません。ブログで何度も書いていますが、英語で最優先なのは英文解釈という勉強です。文系の生徒は、古文で助動詞の識別の勉強をしますが、それの英語版と考えてもらえば近いです。

塾に新しく来た生徒たちに1ヶ月くらいたったあとでインタビューすると「今までなんとなくでしか読んでませんでした」と、みんな言います。

清須市の大学受験 相伝学舎
http://www.sodeng.jp

数学の基礎は、簡単な問題が解けることではない

数学は基礎から始めろ、という言葉は聞き覚えがあるかもしれません。基礎って何でしょうか。基礎を「簡単な問題を解けること」と定義とするなら、青チャートではなく白チャートからやり始めれば良いということになります。もしくは、教科書傍用問題集のA問題あたりから取りかかればよいということかもしれません。これらは誤った認識です。

数学は段階的に理解していく科目ですから、基礎が出来ていれば応用問題が解けるはずです。もちろん段階的とは基礎と応用のような二段階でなければ五段階というわけでもなく、グラデーションがかかったものですが、単純化のために基礎と応用という二段階だとします。

たとえば二次方程式の判別式は、b^2-4acの符号で実数解個数を判別できるという便利なツールであり、この判別式を覚えるだけなら30秒も必要ありません。これを用いて、二次方程式の解の個数を調べよという問題を解くのにも、30秒必要ありません。

基礎を簡単な問題を解くことと定義するなら、b^2-4acの文字だけ暗記すれば良いことになります。

もちろん、公式の文字だけ暗記する勉強はすぐに行き詰まります。判別式がb^2-4acであることはほとんどの高校生が知っていますが、なぜb^2-4acが判別式になるかを知っているのは3割程度です(木村調べ=適当)。

方程式で示すやり方と、二次関数の頂点のy座標で示すやりかたがありますが、どちらの意味もよく覚えておかなければいけません。これをしっかり習得するまでには30秒どころか30分、いや3日は必要です。

簡単に見えるものを簡単に済ませてしまうのか、その意味を含めてしっかりと理解するのかで数学の出来はずいぶん変わってきます。

この問題は東大の過去問題です。基礎か応用かと言われれば応用でしょう。

f:id:sodeng:20160910214640j:plain

しかしこれはaの方程式とみなして、判別式をかませばすぐに解けてしまいます。基礎をしっかりと理解しておけば、指針が立ちますし解けなかったとしても模範解答の意味が理解できるはずです。しかし、30秒で済ませた基礎しかもたない生徒にとっては永遠に模範解答の意味がわかりません。

高校になって数学がわからなくなる原因の一つが、ここにあると思います。中学までの数学は教科書の公式をみて、問題集を一通りとけばテストで80点取ることは難しいことではありません。なので定義や公式の意味を重視する経験をしづらいのです。

それと同じノリで高校の数学に挑むと、教科書例題は解けるのに問題集の少し難しい問題がまったく分からない、ということが起こり得ます。私も高校1年生のときは、この30秒基礎に頼っていたので全くダメでした。

簡単に見える公式や定義が重要です。塾の授業では、新しい単元に入るときは2-4時間くらいはその分野の定義を教えることから入ります。塾に新しく入る生徒には、まずは教科書の内容から勉強してもらいます。

清須市の大学受験 相伝学舎
http://www.sodeng.jp

秋の夜長に「総理(山口敬之)」を読む

総理という本を読んでみました。安倍晋三氏が総理大臣を辞任してから復活するまでの様子が、その間密着しつづけた一人のジャーナリストの視点によって描かれています。

私、政治には1ミリも興味がないんですが、安倍晋三氏とその側近たちが普段どういう会話をしているのかが分かってすごく面白かったです。一晩で読み切ってしまいました。

政治家たちの駆け引きだけでなくて、ジャーナリストという仕事の面白さも分かります。著者はTBS記者なのですが、政治家の取材といったらボイスレコーダー片手に政治家を取り囲んでインタビュー、というイメージがあるじゃないですか。そうじゃなくて、政治家と親密になりホテルで一緒に飲んだりとか、政治家どうしの駆け引きの媒介役をしたりとか、安倍氏がスピーチ原稿を作る手伝いをするとか、イメージとはかけ離れた仕事のようです。

これを読んだらジャーナリストか政治家になりたくなると思います。自分の仕事のヒントになることもたくさんありました。よかった。

塾の生徒には政治家志望者はいませんが・・・自習室に置いておきます。

f:id:sodeng:20160909161717j:plain

総理

総理

 

 

清須市の大学受験 相伝学舎
http://www.sodeng.jp

愛知県は高校の選択が自由でいいですね

今の愛知県の高校入試制度ではどの高校を受験するのにも有利不利がなくていいですね。

私の高校入試のときには学区外への志望は、学区内への志望よりも定員が少なく設定されていたように記憶しています。もっとも神奈川県の田舎のほうで交通の便が悪くて学区外に志望するのは非現実的でしたから、だいたいみんな学区内で高校を志望していました。オール5の生徒はここ、オール4はここ、オール3はここ、という風に、内申点で受験する高校がだいたい1〜2校に絞られ、チャレンジするか無難に受けるかくらいの選択肢でした。

その点、愛知県の名古屋市周辺はコンパクトにまとまっており、電車も多いので通学時間が1時間くらいを見れば、同じ内申点で色々な選択肢が考えられます。選択肢が多くて逆に悩むケースもありそうですが、選択肢がないよりはあるほうがいいことです。

しかし志望校選択というのは難しいですよね。家族や友人に出身者がいなければ伝聞でしか高校を知ることはできません。文化祭なんて楽しく思えて当たり前だし学校見学は学校側がよく見せるものだから見学者にとってはよく見えるものであり、むしろ文化祭や学校見学がつまらない高校は相当つまらないのではというくらいで、あんまり参考になりません。それでも行くだけ立派で、私なんて高校受験、大学受験ともに学校見学なんて一度もいったことがありません。受験できる最大限偏差値の高いところを目指す、というシンプルかつテキトーです。

人生の選択というのは入試問題と違って100%の正解などありません。どんな選択をしても、部分的に良い側面があり部分的に悪い側面があります。私は慶應にいって良かったと思う一方、性格を考えたら早稲田のほうが良かったのではと思うこともあります。就職だって選択として悪くないだろうと思って選んだ会社でしたが、6年後にはもう居続ける理由はなくなったと感じました。今は塾をやっていますが、また6年後にどう考えているかはわかりません。

100%正解の選択などありえないのだから80%くらい正解だと思える選択肢を選んで、その後に次の行動を考えれば良いんです。それで、漸次的に自分の理想に近づけます。たぶん。

 
清須市の大学受験 相伝学舎
http://www.sodeng.jp