数学は基礎から始めろ、という言葉は聞き覚えがあるかもしれません。基礎って何でしょうか。基礎を「簡単な問題を解けること」と定義とするなら、青チャートではなく白チャートからやり始めれば良いということになります。もしくは、教科書傍用問題集のA問題あたりから取りかかればよいということかもしれません。これらは誤った認識です。
数学は段階的に理解していく科目ですから、基礎が出来ていれば応用問題が解けるはずです。もちろん段階的とは基礎と応用のような二段階でなければ五段階というわけでもなく、グラデーションがかかったものですが、単純化のために基礎と応用という二段階だとします。
たとえば二次方程式の判別式は、b^2-4acの符号で実数解個数を判別できるという便利なツールであり、この判別式を覚えるだけなら30秒も必要ありません。これを用いて、二次方程式の解の個数を調べよという問題を解くのにも、30秒必要ありません。
基礎を簡単な問題を解くことと定義するなら、b^2-4acの文字だけ暗記すれば良いことになります。
もちろん、公式の文字だけ暗記する勉強はすぐに行き詰まります。判別式がb^2-4acであることはほとんどの高校生が知っていますが、なぜb^2-4acが判別式になるかを知っているのは3割程度です(木村調べ=適当)。
方程式で示すやり方と、二次関数の頂点のy座標で示すやりかたがありますが、どちらの意味もよく覚えておかなければいけません。これをしっかり習得するまでには30秒どころか30分、いや3日は必要です。
簡単に見えるものを簡単に済ませてしまうのか、その意味を含めてしっかりと理解するのかで数学の出来はずいぶん変わってきます。
この問題は東大の過去問題です。基礎か応用かと言われれば応用でしょう。
しかしこれはaの方程式とみなして、判別式をかませばすぐに解けてしまいます。基礎をしっかりと理解しておけば、指針が立ちますし解けなかったとしても模範解答の意味が理解できるはずです。しかし、30秒で済ませた基礎しかもたない生徒にとっては永遠に模範解答の意味がわかりません。
高校になって数学がわからなくなる原因の一つが、ここにあると思います。中学までの数学は教科書の公式をみて、問題集を一通りとけばテストで80点取ることは難しいことではありません。なので定義や公式の意味を重視する経験をしづらいのです。
それと同じノリで高校の数学に挑むと、教科書例題は解けるのに問題集の少し難しい問題がまったく分からない、ということが起こり得ます。私も高校1年生のときは、この30秒基礎に頼っていたので全くダメでした。
簡単に見える公式や定義が重要です。塾の授業では、新しい単元に入るときは2-4時間くらいはその分野の定義を教えることから入ります。塾に新しく入る生徒には、まずは教科書の内容から勉強してもらいます。