月刊木村:清須市で営む塾での日々

相伝学舎という塾を経営しています。好奇心の格差時代に、大学受験を通じた成功体験の場を提供することが使命です。

邪魔しないでください 2

自分の殻を破って成長するには、そこに主体性が絶対に必要であって、ここで他人が「ああしろ」「こうしろ」と口をだしてしまうと、いけません。これがメルマガ本文と通ずるところであって、中国で今成功している企業というのは政府に口を出されなかったことがポイントだったと書いてあります。

受験も同じで、成功する受験生というのは親に「勉強しなさい」と言われていない傾向にあるのです。手元に「東大生の親に聞いた「頭のいい子」「集中力のある子」の育て方」という本があって15人の東大生の親に教育方針をインタビューした結果をまとめている本があります。これによると15人中「勉強しなさい」と強調したという親はたったの1人。

だからといって今この記事を読んでいる高校生の保護者のみなさんが同様に「勉強しなさい」と言うのをやめれば全てが好転するかというとそういうわけでもないでしょう。物事の表面ばかり見ていてはいけません。

「勉強しなさい」と言わないでうまくいくのは、小学生までに家庭で文化的な生活を営んできた場合ではないかと思います。幼少期に絵本の読み聞かせを毎日していたとか、家に図鑑や本がそろっていていつでも見ることができたとか、博物館や美術館にいく習慣があるとか、そういうことです。また、親自身が文化的な人間であることも重要でしょう。

たしかに、大学受験の合否というのは高校3年間の勉強の結果であることは否めません。しかし、同じ勉強時間でもそれまでにどういう環境で成長してきたかによっても大きくかわるのではないか。学力とは、氷山の一角のように目に見えない部分で実は大きな要因があるのではないかと考えざるを得ません。

「勉強しなさい」という発言には物事を短絡的にしか見ることができない姿勢があらわれているのであり、親がそういう視点で考える以上、子もまた短絡的にその場凌ぎの勉強をするようになるのも無理がなく、そうなってしまってはいくら塾に通わせようと大きな変化は期待できない。大学受験の学力とは1冊の参考書を半年とか一年かけて2周3周と繰り返すなかで徐々に形成されるものだから、「毎日の授業の予習復習をした」とか「毎週の宿題をとりあえずこなした」という、「やらなきゃいけないことをボクやったの、えらいでしょ」的なスタンスでは身につきません。私の塾は英語も数学もそれだけをやってもらえば良いという設計ではなく、指定の参考書を独学していく補助となるように設計しているのであって、短絡的に授業の時間だけ集中するというのでは結果は出ません。

人間というのは機械ではないのです。宿題や補習を詰め込んだら夢のような学力がつくという単純な話ではありません。大学にいきたい、受験で成功したい、もしくは将来こういう仕事についてみたい、という根源的な欲求があって、受験にたいする主体性がうまれて、気がついたら朝から晩まで机に向かっていたという毎日にシフトしていくのです。

視点を変えれば、ある一人の受験生にたいして他人が出来ることなどほとんど無いに等しいということ。私みたいに英語や数学をハイレベルな内容で教えられる知識があれば少なからず手伝いができるのですが、そういう知識がない人ができる最大限のこととは「邪魔しない」ということになるのです。

しかし「邪魔しない」ということができるのは、他人に邪魔されずに自分が何かを成し遂げたことが出来る人間の特権であって、自分が根源的欲求に従って主体的に何かを成し遂げた経験をしたことがある人というのは極めてすくない。だから、高校生にたいして積極的に関与したほうが結果が出るという考えにいたってしまうわけです。

まとめると、大学受験の成功とは生徒が根源的な欲求に従って勉強に没頭することとそれに対して外野が邪魔しない、という2点が極めて重要であるが、この2点が成立しうる環境で育ってきた高校生は少数派であり、この2点が現時点で成立している高校生は今の親のもとに生まれた幸運に感謝すべき。

ドドン。

 

清須市の大学受験 相伝学舎
http://www.sodeng.jp