月刊木村:清須市で営む塾での日々

相伝学舎という塾を経営しています。好奇心の格差時代に、大学受験を通じた成功体験の場を提供することが使命です。

五条高校の生徒が3年間しっかり勉強して国立大学医学部に現役合格した話 3

入塾当時のKさんの学力は、「学年最下位でした」なら面白いのですが、入塾面談のときには定期テストで最高360人中20位を取ったことがあると言っていました。五条高校のなかでは、結構頑張っていたほうでしょう。また、中学時代は実技科目に足をひっぱられていたようなので、五条高校生とはいえ主要科目にたいする知識と理解力は高いほうでした。

この記録を通して、「五条高校生ならビリからでも医学部を目指せますよ」と言う気はありません。五条高校生でもトップ1割(高2高3で8・9組)にいないと、無理です。(というか8・9組でも無理です。)

五条高校のなかでそこそこ良くても、実際の学力が高いとは限りません。手元に残っているこの答案を見る限り、英語は相当に改善の余地ありです。

 

f:id:sodeng:20170410211358p:plain(2015年4月16日の答案。ここからセンター192点は頑張った!)

 

公立高校生の英語学習の致命的な欠陥は、単語と文法の学習しかなく英語を読むための訓練がないという点にあります。どれだけ学校の勉強を頑張っても英語の偏差値が上がらない人は、学習が単語と文法に偏っていないか確認してみてください。

生徒の英語読解力を上げるために塾の授業では英語を読むための訓練、つまり英文解釈を中心に教えていますが、週1回2時間の授業では知識を網羅的に教えることができません。そこで、毎日の自習を充実させることが第一の指導になります。

Kさんには速読英単語(必修編)と、英文解釈の参考書を取り組んでもらうことにしました。英単語+英文解釈の二本立ての自習は、私の英語の指導の根幹なのでKさんのみならず生徒全員に取り組んでもらいます。ただ、生徒のレベルによって紹介する参考書が少し変わってきます。

この勉強がつまらないのか、1日1題ずつ参考書の勉強を進めてねと言ってもその通りにやってくれる生徒の割合は2割くらいで、悲しくなるくらい少ないのが実情です。しかし、Kさんの場合は非凡な能力その2である「とにかく素直」という性質によって、1日1題ずつ参考書をすすめてどんどん知識を吸収していきました。

Kさんの体験記にある(ない)ように、授業で私が彼に教えたことは多くありません。私は自習を大事にするように教えており、実力を確実につけてくれる参考書を紹介して自習を充実させます。その通りにやってくれれば学力がつくし、やらなかったらつかないという塾です。

新高2で同時期に入塾した4名のなかで最も成長が早く、7月頃には英語の和訳答案がずいぶん良くなってきました。それを示すように、夏休み明けの第2回全統模試(河合塾)では英語が偏差値64で学年318人中12位、数学が68で9位と、学年上位5%に入ってきました。

 

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五条高校の生徒が3年間しっかり勉強して国立大学医学部に現役合格した話 2

合格発表直後に、Kさんに書いてもらった体験談をご紹介します。

僕は、学校の先生から「この大学に行きたいなら、定期テストで1位をとれ」と言われました。でも、定期テストと入試は関係ない気がしていたので、相伝のチラシにすごく共感しました。入塾前は、学校の課題をこなしていただけでしたが、入塾後は、自分で取捨選択して勉強できるようになりました。このことが自分の成績を伸ばしてくれたと思っています。勉強生活については、多くのテキストに手を出さず、同じテキストを何度もやる、睡眠はしっかりとる、学校に頼りすぎない、志望校の問題傾向を知っておく、ということが大切だと思います。最後に、学校よりも自分や、自分の選んだテキストを信じたほうが合格に近づけると思います。あと、僕は後期で受かったので、最後まで諦めないということが大切だと思います。

高2からの2年間が圧縮された良い作文をしてくれました。ありがとうございます。入塾から、振り返ってみたいと思います。

Kさんは新高2の春に入塾しました。入塾前、春期講習説明の面談では、「医学部に行きたい。高1の1年間は学校のテストを中心に勉強してきて、先生からは『医学部にいきたいならまずは定期テストで1位を取れ』と言われた」ということを言っていました。

blogでは繰り返し述べていますが、学校の定期テストと入試は完全に別のものです。定期テストというのは教科書の数十ページの短い範囲を要領よく暗記する能力を測るものである一方で、入試というのはとくに医学部などの難関大受験においては参考書数百ページを計画的に理解していく能力が求められます。一般入試で医学部に合格したいのなら、定期テストは無視して大学入試のための勉強をいますぐ始めるべきだ、という話をしました。

「医学部にいきたいならまずは定期テストで1位をとれ」というアドバイスは「甲子園にいきたいならまずは100mを10秒台で走れるようになれ」と言うのと、大差がないように私には思えます。

Kさんの場合、面談の数ヶ月前にはすでに定期テストにたいして懐疑的だったようですから、私の話はすぐに理解してもらえたのだと思います。 ちなみに、一番最初に疑いを持ったのはテスト中に、分からない選択肢の問題でア、イ、ウ、エのどれを選ぶか一生懸命考えていたときに「あれ、これで正解して1位をとっても入試にはつながらないんじゃね」と思ったときだそうです。なかなか、鋭い思考をしています(笑)。

Kさんにはいくつか非凡な能力がありましたが、高1の段階で学校の言うことを疑えたというのは振り返ると大きな分岐点でした。五条高校は教える側も、教わる側も高校の勉強方法にどっぷり浸かっていますから、そのやりかたに疑いをもてる生徒というのはおそらくかなり少数派です。クラス40人中、1人か2人程度しか存在しないのではないかと思います。

さらに幸運なことにKさんのお母様が私の折り込みチラシを見つけてくださいました。いまでこそblogを見てくださる人が毎日数百人いますが、当時のblogアクセス数は1日に20とか30で、そのほとんどが私と妻でした。blogを見てきたという人などいるわけがありません。先日、お母様から「チラシをみて先生のような人にみてもらえれば伸びるんじゃないかと思いました」と身に余るお言葉を頂戴しましたが、まだ生徒もいなければ看板もない私の塾に興味を持っていただけたからこそ、Kさんと私が面談をすることができたわけなので、幸運に感謝するほかありません。

 

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五条高校の生徒が3年間しっかり勉強して国立大学医学部に現役合格した話 1

相伝学舎の第一期生で、浜松医科大学医学部医学科に合格したKさん(五条高校)の合格までの軌跡をご紹介します。

普通、高校の合格実績一覧に「東京大学2名」とか「名古屋大学15名」とか書いてあっても、学部までは分からないうえ、合格した生徒が実際にどういう勉強をしていたのかが明らかにされることはありません。とくに高校の合格実績とは「高校に在籍していた生徒」の合格実績であって「高校の指導通りに勉強していた生徒」の合格実績とはかぎりません。とくに学年の上位1割未満しか合格できないような大学に進学していく生徒は、高校の指導に頼らない勉強をしている割合が高いのではないかと私は考えています。

国立大学の医学部医学科というのは、センター得点率ボーダーが90%、河合塾偏差値が65以上で、かなりの地方であっても東京大学の理類と同程度の学力が必要になるところが多いです。Kさんの合格した浜松医科大学は国立大学のなかでは都市部よりなので、国立医学部のなかでも難易度は高いほうです。

国立大学医学部の受験の難しさは、必要な学力が高いという点のほか、1年で2校しか受験出来ないという制約にあります。国立大学医学部は6年間の学費が400万円以下であるのにたいし、私立大学医学部は最も安いといわれる慶應大学医学部でさえ2000万円で、すでに国立大学の5倍です。愛知県でいうと藤田保健衛生大学は3600万円で、国立大学の10倍近くになります。

親が開業医や会社オーナーでないかぎり医学部を目指すとしたら国立に絞られます。国立は前期と後期の2回出願できますから、2回の受験チャンスがありますが、後期はかなりの混戦となり狙って合格できるようなものではありませんから、前期一発勝負で後期はほとんどダメ元での勝負になります。

医師になりたいと思っても、私立は学費が高すぎる、国立はレベルが高すぎる、となってそもそも挑戦する前に諦めてしまう生徒も多いのではないでしょうか。

滑り止めなしの一本勝負に挑戦しようという勇気を持った次に立ちはだかるのが、どうやったら合格者レベルに達せられるのかわからない、暗闇で突っ走る不安です。愛知県でいえば滝高校や東海高校からなら、国立医学部に合格する生徒がひと学年に数十人単位でいるのでイメージがつくかもしれませんが、公立高校の場合、一宮高校でも国立医学部に合格できる生徒はかなり少ない(たぶん年間で2-3人くらいでは)はずで、合格するにはどうしたらいいのか実感をもつのがきわめて難しいです。医学部受験は、一宮や岡崎等のトップクラスを除く公立高校に進学している時点でほとんど詰んでいるといっても良いでしょう。

実際、五条高校から国立医学部に現役で合格した生徒というのは十数年ぶりらしいですし、Kさんが入塾前面談で医学部志望だと話してくれたときの私の最初の感想も「公立高校から医学部に現役で合格したやつなんて見たことねーよ」というものでした(笑)。

それだけに、Kさんの国立大学医学部合格の持つ意味は大きいです。公立高校の生徒がどのようにして医学部レベルの学力を手に入れていったのか、blogである程度のことは伝えていけます。五条高校の生徒のみならず、愛知県の公立高校生にとって参考になることを願います。

本編に入るまえに、だいぶもったいぶりましたが(笑)、現役で国立大学の医学部医学科に合格することがどれだけ大変なことかを分かってください。

それではまずは、本人に受験生活を振り返ってもらった体験談をご紹介します。

 

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英語でセンター160点なら3冊

私の英語の指導ではセンター160点までなら必要な参考書は3冊で済ませます。速読英単語が1冊に、英文解釈の参考書が2冊です。単語帳は受験が終了するまで何周もとりくんでもらって、英文解釈のほうは10ヶ月くらいかけて3周やってもらえば、読めない英文はなくなります。

センター英語の後半は英語が読めさえすれば落とすことはないので、長文問題で失点を防いで前半の文法問題で知っているものだけ正答できれば160点にはいきます。

さらに180点を目指そうとしたら、文法の参考書を2冊ほど仕上げてもらいます。

英語において文法問題というのは高校生の勉強のメインどころであるのに、案外出題されません。長文を正確に読めさえすれば、だいたい合格点にはのせられます。なので、私は文法問題を授業中にやらせることはないし、センターで9割欲しい生徒を除けば参考書も紹介しません。あ、でも去年は英文解釈の参考書を3周やりきってしまってやることが無いという生徒に文法の参考書を紹介しました。

英語だけでなく、他の科目も必要な参考書というのは5冊以下くらいのものが多いです。大事なのは、何周もして理解を深めることです。

塾や予備校にいかずとも、受験科目数×1万円くらいの出費で大学受験はなんとかなってしまいます。実は。

清須市の大学受験 相伝学舎
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コロコロかえちゃだめよ

ちょっとやる気が出た高校生のやることといえば、本屋さんで大学受験の参考書コーナーをうろつくことでしょうか。有名な参考書をふくめ、なんとなく学力が上がりそうなタイトルのものが何冊も目に付くことでしょう。

大学受験で陥りがちな失敗は「参考書をコロコロ変える」です。これをやるとまず学力は上がりません。コロコロ参考書をかえることで、どの参考書からも表面的な知識しか身につけられない、というのが表面的な説明になるのでしょう。

しかし、本質的には参考書をかえるという行為にあるのではなく、そうしたくなってしまう考え方に問題があるように思えます。

参考書にとりかかる→2週間くらい取り組んでみたが学力が上がる実感がわかない→これより良いものがあるんじゃないかと不安になる→新しいものに手をだす

というのが、参考書をかえてしまう人の考え方でしょうか。一方、参考書を変えない人は

参考書にとりかかる→2週間取り組んでみたが学力が上がらない→そんなものだと思って我慢して続ける→2-3ヶ月後になんとなく出来てきた感がする→半年かけて2周してめちゃくちゃ偏差値が上がる

というサイクルを回しています。

どこに境目があるのか?それは、過去に成功体験を持っているかどうか、というのが私の現時点での予想。

学力とはある閾値を超えた段階で急激に伸びるもの、という成功体験があれば1ヶ月やそこらで結果が出なくとも継続できます。が、そういう経験が無い人というのはこのまま時間切れになってしまうのではないかという不安におちいるのでしょう。

勉強ではなくてもいいから、我慢の時期がある成功体験を15才までにしていてほしいです。

 

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