月刊木村:清須市で営む塾での日々

相伝学舎という塾を経営しています。好奇心の格差時代に、大学受験を通じた成功体験の場を提供することが使命です。

させていただく

先日塾生から数学の質問がありました。

よくある「学校の授業で板書担当になった問題の解き方を教えてほしい」というものです。私は初めて見る問題なんて自分で考えずにさっさと答えを見て解き方を覚えてしまえ派の人間ですので、そういう質問は塾で保有しているプリント作成ソフトから同じ問題を探して答えを印刷して渡します。浮いた時間で青チャの演習をするか、ぼーっとスマホでyoutubeでも見ていてもらったほうが良いです。

今回はわざわざ答えを調べなくてもすぐに綺麗な解答がその場で思いついたので、2-3分で説明しながら解答を書いて渡しました。塾生は、

「使わせていただきます」

と言っていました。「〜させていただく」という表現はどうも違和感のある用例が多いですが、このときの「〜させていただく」は使用場面として適切だと思ったのでしっくりきました。

「させていただく」というのは相手(目上の人)の許可・承諾を得て自分が行動するときに使います。「させて」が使役の助動詞で、「いただく」が「もらう」の謙譲語です。でも実際には相手の許可・承諾を得ない場面でも「させていただく」を使う人が多いです。その場合はどちらかというと使役抜きにへりくだった表現、カドのとれた表現として使われているようです。

先日もある営業の人から「後でメールさせていただきます」ということを言われたんですが、メールしていいか悪いかなんて私が承諾することではないしメールするのに相手の承諾がいらないことなんておそらく世界共通の認識のはずなので、「メールする」という行為にたいして使役の意味は本来不要です。ということはこの文脈において「メールさせていただく」という発言に使役の意味は含まれていなくて、単に「メールします」を少し丁寧に言っただけで使われています。

この表現はすでに市民権を得ている気もしますが、私は「させていただく」じゃなくて「自分が好んでしている」という気持ちで行動することのほうが多いので、「させていただく」をなるべく使わずに生きて行こうと思っています。

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