うちの子が結婚しないので 垣谷美雨
28才の娘が結婚の兆しを見せないので親が代理で婚活する。代理婚活では男女数十人の親が集められ、事前にリストで決めておいた希望の人の親に連絡先の交換を申し込む。申し込みのときに代理の親は「あなたの子はうちの子に合わない」と遠回しに言われて傷ついたり、連絡先を交換したあと本人同士が食事をしてみてもなかなかピンとくる相手に出会えなかったりして、作中の人物は感情を起伏すると同時に、読んでいるこちらも感情が起伏する。
小説は大どんでん返しがあるとそれだけで読み手はドキドキして面白いと感じるが、この作者の話は大どんでん返しがなくても普通のストーリーのなかで読み手の感情を揺さぶってくる。心を直接手づかみしてくる感じ。強いグリップで坂道をぐんぐんと登っていくディーゼルエンジンのように、心をつかまれた状態で話がどんどん進んでいく。
東野圭吾(大どんでん返しの帝王)はたしかに面白いが大味。垣谷美雨は素材の味で勝負。一見地味な茄子の揚げ浸しがめちゃ旨いみたいな感じ。
面白度:コンパス4つ
🧭🧭🧭🧭〇
以前読んだ同じ作家の「後悔病棟」のほうがファンタジー要素があって好き。