月刊木村:清須市で営む塾での日々

相伝学舎という塾を経営しています。好奇心の格差時代に、大学受験を通じた成功体験の場を提供することが使命です。

愛知県高校入試の制度変更による受験生への影響

2023年2月の入試から愛知県の高校入試制度が変わります。その影響についてまとめてみます。

 

変更点1 入試日程が変わる

今まで愛知県高校入試はA日程、B日程がそれぞれ3月第1週目に1回ずつ行われていました。そのため受験生はほとんど同じような問題を2回に分けて受験していました。

この入試が統一化され、受験生は公立高校入試を一発だけ受験すれば良いことになりました。これまでの2回受験パターンだと問題によって「A日程はうまくいったけどBはダメだった」みたいなことがありましたが、これからは一発勝負ということになります。どちらにせよ当日の試験問題を選べるわけではないので、受験生にとっての影響はプラスマイナスゼロです。

 

変更点2 面接がなくなる

厳密には「なくなる」ではなくて「高校によって面接の有無が異なる」ですが、ほとんどの高校は面接「なし」ですので、事実上なくなったと見てよいでしょう。

これだけ「なし」が多いということは、高校側が「面接なんてやっても意味無し!」と前から考えていたんだと思います。

ちなみに「実施」の高校(普通科)は

守山高校、日進高校、津島高校、美和高校、阿久比高校、東浦高校、内海高校、武豊高校、松平高校、加茂丘高校、岩津高校、幸田高校、一色高校、田口高校

だけです。

受験生にとっては負担が減った結果になります。

 

変更点3 入試配点が変わる

今までの高校受験は配点がI,II,IIIの3方式があり、評定A点(45×2=90点満点)と学力検査B点(22×5=110点満点)が

I・・・2A+B(内申点重視)

II・・・1.5A+B(内申点やや重視)

III・・・A+1.5B(テスト重視)

となっていましたが、これにIV, Vが加わって

IV・・・2A+B(内申点かなり重視)

V・・・A+2Bの(テストかなり重視)

となり、選択肢が増えました。

これによって高校側は「内申点の高い生徒が欲しいのか」「学力が高い生徒が欲しいのか」はっきりすることができ、受験生側は「内申点配点の高い高校を狙うのか」「学力重視の高校を狙うのか」という作戦をはっきりたてることができるようになり、双方のマッチングが良くなることが予想出来ます。

この変更点は受験生にとっては大きな影響を受けます。

内申点重視かテスト重視かで、配点に大きな差があります。もっとも入試重視の高校は、全体の71%がテストになり、言い換えるとテストの得点が内申点の2倍以上の価値になります。

テスト比率71%は大学受験でいうと名工大や名大工学部の二次比率と同じくらいです。ものすごくテスト比率が高いってことです。

テスト比率が高い入試だと、内申点が取れていようといまいと入試当日にしっかり得点しないと受かりません。たとえば名工大の合否追跡調査で

こういう表がありまして、これはボ(=ボーダー=共通テストでC判定)21人中、12人が合格し9人が不合格だったことを示しています。

共通テストでボ(ボーダー)より上回っていても、合格:不合格が11:5とか6:5とかかなり接戦で、逆にボより下回っていても9:10とか9:11とかいう接戦です。

これが高校入試でも起こり得るというか、まず間違い無く起こると考えて良いでしょう。

ではI〜Vと入試配点種類が増えたとして、各高校はどのような入試方式を採用したのか?

なんと、普通科の進学校のほとんどは「V」を採用しています。一応リストアップすると

旭丘、明和、瑞陵、松蔭、西春、新川、五条、一宮、一宮西、一宮南、昭和、熱田、天白、名南、・・・まだまだ続きますがこのくらいにしておきます。

逆にIII型を維持する高校が千種、名西くらいです。

これはこれまで各高校が「内申美人がいると学年内の学力幅が大きくて授業がやりにくい!」と思っていたことの表れでは?と予想しています。内申点に対する信用が薄いのでしょう。

大学受験で指定校推薦制度を利用している高校は、もっとIII型を維持してもよいのではと思いますが、まだ「大学受験=一般入試」みたいな考えが残っているのかもしれません。

では、このような入試制度変更によってどのくらいの割合の中学生が影響を受けるのか?愛知県がシミュレーションをした、

一般選抜における各高等学校の面接実施の有無及び校内順位の決定方式

という資料を見てみると「校内順位の決定方式の違いによる合否結果への影響は、合否ライン付近の受験生に限られる」と書いてありおおむね全体の1割程度の人数とあります。

たしかに、過去の出願&得点結果から分析するとそのような結論になるかもしれません。

しかし実際には

定期テストがイマイチでも内申は良い内申美人タイプは出願を保守的にする

定期テストや全県模試が良いのになぜか内申が悪いタイプは強気に出願する

という傾向が強まるに決まっているので、そもそも出願の時点で変化が生じます。なので↑の表のように、過去の入試データを元にどういう変化が起こるかを考察しても現実とは合わないものになります。

出願の時点で変化が生じて、さらにそこから先実力勝負になるので、各高校に入学する生徒は2-3割がごっそり入れ替えるくらい変わってもおかしくありません。

これによって起こる変化をグラフにまとめてみます。

高校入試の併願の組み合わせは例えば

向陽→瑞陵→松蔭、や

一宮→五条→新川

といった併願パターンがあり、これまでの入試制度だと「学力が高くても内申点が低くて落ちた」という受験者がいる分、各学校内での学力はギザギザの線になります。

今回の「V型」導入で、このようなギザギザは解消され

この赤線のようになるはずです。

自分より上の高校がないトップ高校(一宮、旭丘、明和、向陽、岡崎)のトップ層は行き場がないので変わりません。↓

それ以外の高校では、これまで「内申低くて一宮落ち」とか「明和落ち」として高校の合格実績を支えていた層が実力通り上の高校に入学し、上位層が薄くなります。↓

多くの高校で「全体の学力は下がるが、学年内の学力差は縮まる」という現象がおこるはずです。

3年後に起こる大学入試合格実績の変化については

トップ高校 大きく変化なし(全体的に地味によくなる)

それ以外 見かけ上悪くなる

となると予想出来ます。

トップ高校のトップ層はこれまで通り変わらないので、一宮高校の東大合格者数が10人から30人になるかというと、そういう変化はないはず。

一方で、トップ層落ちの受け皿だった高校は稼ぎ頭がいなくなるということなので、各高校の名大・名工大あたりの合格者数が半分くらいに落ちてもおかしくありません。

愛知県全体としては中学卒業生が学力順に高校に割り振られることで、それぞれの高校で適切な授業を受けることができて、全体の学力アップにつながることが期待できるので、良い制度変更だと思います。

大学受験 相伝学舎 (清須校舎、桜山校舎)
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