月刊木村:清須市で営む塾での日々

相伝学舎という塾を経営しています。好奇心の格差時代に、大学受験を通じた成功体験の場を提供することが使命です。

東栄町での地質調査(地惑後輩へアドバイス)

さて、2024年以降の地球惑星科学科2年生がこのページにたどり着いたことを想定して、アドバイスなどを書いておきます。

 

まず服の準備について。

 

①ヘルメット(大学貸与)

忘れずに持って行って下さい。

②ネックウォーマー

自分は寒がりなので冬場はたいていつけてます。地質調査中は寒暖差が激しいです。山の中(歩いている時はあつい)、山の中(休憩中は5分で冷える)、川(アルベドが大きく暑い)、日なた(太陽放射で暑い)、日陰(とたんに寒い)。

③ルーペ(大学貸与)

私は常に首から掛けていつでも岩石同定ができるようにしていました。

④リュックサック

これは適当でいいです。調査中はほとんど荷物ないので。

⑤インナー

モンベルのメリノウールインナーが重宝しました。少し高価ですが普段使いできるのでおすすめです。

⑥ニット

インナーの上にウールのニットを着用しました。普段使いしているものでokです。

⑦アウター

多少は風を防いでくれる素材のものがオススメです。山の中で風が吹くと一気に冷えます。モンベルのノマドジャケットを愛用しました。山の中は小枝をかき分けて進むこともあるので、フードがないもののほうが歩きやすいです。レインウェアは伸縮性がないのでアウター代わりに使うのは少し機動力を下げます。(地質調査では沢をガンガン登っていくので伸縮性がないと動きづらい)。

⑧手袋

ワークマンで500円くらいのものを買いました。これも防風性能があるものがおすすめです。

⑨ウェストポーチ

ワークマンで1500円くらいのものを買いました。

これとハンマーをベルトに通します。

中には、筆記用具、クリノメーター、地質図メモ帳、ホワイトボードマーカー、タガネ(使わない割に重いので不要)、マグネット式のホワイトボード(写真撮影に便利)

と携帯を入れていました。すぐに取り出せるのでとても重宝しました。その他、露頭の記載をするときに注意したいことをプリントにして携帯しました。主に春学期に習ったことと、図書館で借りた本をまとめました。

⑩ハンマー(大学貸与)

⑪インナー

寒がりなのでボトムスもインナーを着用しました。モンベルのジオラインを買いました。

⑫パンツ

手持ちのもので間に合います。山の中で結構な岩を登ることもあるので伸縮性があると良いです。

⑬靴下

⑭登山用靴

⑬と⑭が一番大事です。最も予算を投下すべきなのは靴です。調査中は滑りやすい岩の上を歩いたり、場合によって渡河します。靴によって、行動の難易度が上下します。登山用品店に行って、店員さんに相談して買うのが一番いいです。

 

その他、宿の様子
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服をかけるところは十分な数あります。


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炊飯器は必須です。10号用を持参しました。5人の班なら5号で足ります。ポットはグリーンハウスにあるので不要です。レンジはありませんが冷蔵庫は使えます。

 

1班で大原から山を登って老人ホームへ抜ける登山道ですが地図では小道があるようにみえて実際は途中で道がなくなっていて詰みますので注意してください。今年は元旦の地震でもっと崩壊しているかも。勇気をもって谷を下った結果335地点の旧道まで行けましたが、メンバー全員「遭難したかも」と思った瞬間でした。
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写真で見ると険しく見えないんですが、かなりキツかったです。

 

その他の注意事項

 

地図

前もって自分たちの行動範囲の地図を作る必要があります。国土地理院のHPからデジタルデータで調査範囲の地図を買います。200円でお釣りがきます。デジタルデータだと1/5000に拡大したときに線がぼやけないのが良いです。

作成するのは2万5000、1万、5000の3種類です。

5000は調査中に携帯するので磁北線を入れます。パワポで真北(地図上の北)から7度西偏した直線を引きます。

実際にはパワポでは直線に傾きを設定できないので、長方形を使いました。右下にスケールを入れましたが1/5000では全く使いませんでした。

1/5000は調査地域を9分割してA4に印刷したのですが、調査中に地図を入れ替えないといけないことがあって手間だったのでA3印刷にすりゃ良かったと思いました。

このほかにも作成法はあるみたいで高橋先生のblogに紹介されてました(後から気づいた)。

地図の準備はそれなりに時間がかかるので、地質調査法の授業でやってくれれば良かったのにと思います。最初の2回の文献の調べ方の代わりに地図作成なんてどうでしょう?

 

ジップロック

岩石を持ち帰るためにジップロックを使います。100以上は収拾するので200枚くらい事前に準備しておくのがオススメです。グリーンハウス近くのスーパーでも売ってます。

 

持って行けば良かったと後悔したのは岩石同定用の本です。岩石図鑑とかハンドブックみたいなものを班員の1人くらいは持っていると思うので、東栄に持って行ってください。それがないと、凝灰質砂岩、凝灰岩、流紋岩、あたりの見分けが曖昧なまま進んでしまいます。

一応分別方法いくつか紹介しておきます。

泥岩-凝灰質泥岩

泥岩は一般的ですが、「凝灰質」とつくと混ざり物が入ってきます。

これは凝灰質泥岩の見た目です。北設亜層群の凝灰質泥岩は、生痕化石が入っている場合が多いです。(zoophycos、サイコサイフォン)。

 

砂岩-凝灰質砂岩

砂岩は淘汰が良いですが、凝灰質砂岩は混ざり物が入ってきます。

 

凝灰岩-流紋岩(or火山岩)

凝灰岩も火山岩も成因が似ているので見分けが難しいです。触るとボロボロ砕けるものは凝灰岩です。硬い場合は鉱物粒子に注目します。凝灰岩は粒子が不揃いですが、火山岩は粒子は自形の斑晶です。自形というのがポイントです。気泡のように見える穴は角張っている場合鉱物の抜け穴なので、火山岩の可能性が高いです。流紋岩はこれといったお手本の見た目がないので難易度高いです。安山岩はだいたい同じ見た目なので同定が容易です。ただ安山岩と思っていた岩石も3年前期の化学実験でSiO2質量を調べてみると玄武岩に近いです。

 

粗粒砂岩-中粒砂岩-細粒砂岩

砂岩の粒度は見た目の感じではなくてサイズが決まっています。0.5mm以上が粗粒で、0.25mm未満が細粒です。一度、グリーンハウスに持ち帰った岩石に定規を当ててどのくらいが粗粒なのか確かめてみると良いです。川角層の砂岩はわりと粗粒です。

 

調査でやること

行く前は「調査って何するの?」状態だと思います。基本的にやることは、

【日中の調査】

谷や沢を中心に露頭を調べる。

・標高を上るように調べると良いです。

・地層の境界が判明するととても良いです。

【宿での作業】

・岩石の同定をする。

・堆積岩の走向傾斜の情報をもとに、地質図をとりあえず描いてみる。

 

正直行く前は12泊なんてキツすぎる・・・と思ってましたが始まってみると楽しくて一瞬で終わりました。来年以降の2年生のみなさんがうらやましいです。

 

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