現中学3年生から大学入試制度が変わると言われています。入試制度についてのニュースはちゃんとチェックしていたんですが、方針がコロコロ変わるのでblog上ではあまり言及してきませんでした。しかし実施案というのが一昨日公開されてある程度固まってきたようなので、思うことを書いてみます。
どう変わりそうなのかはニュースを見てもらったほうが詳しいのですが要は、センター試験のうち国語と数学に記述解答問題が増え1点刻みではなく段階的に評価し、英語はtoeicや英検のような民間テストを活用する、ということらしいです。
国立大学受験に必要なのはセンター試験+二次試験ですが、二次試験については今のところ変化する様子はありません。私大入試についても同じです。
では中学3年生諸君がすべき勉強が大きく変わるかというと、ほぼ変化無しと考えてさしつかえないでしょう。国語と数学の問題例を見ましたが、特別な対策が必要になるとは思えません。数学は「意味」にこだわっているかどうかを選別するような問題に見えますが、まともな大学を受験する生徒にとっては常識のことです。
普通、国立大学を志望する生徒は二次試験に合わせて勉強をします。二次試験のレベルに各科目仕上げていって、最後にセンター向けの対策をして受験していきます。二次試験に変化がなく、センター試験も大きく変化しないのであれば、やるべき勉強も変わりません。
ただし、英語についてはtoeicにせよ英検にせよスピーキングかライティングが必須になると中位層以下の受験生は負担増になります。上位層はスピーキングだろうとライティングだろうと、少々対策すれば出来るようになります。受験生全員を対象とする試験なら問題を難しくして平均点を下げることはできないでしょうから、問題はスピーキングでもライティングでも難しくできません。となると、上位層はちょこちょこっと対策すればOK、くらいの難易度になるはず。
中位層以下が負担増といっても、その条件は全員同じですから、競争としてこれまで以上に難しくなるかというとそれはありません。帰国子女や留学経験があってやや有利になる生徒がいたとしても、全体の割合としたら微々たるものなので影響を熟考しなければいけないものでもありません。
しかし最初の数年のうちは、toeicでも英検でも対策するために十分にお金を使える金持ち有利、貧乏人不利になるおそれはあります。もちろん進学校はある程度対策授業を提供するでしょうけど、民間企業が対策のサービスを提供するほうが圧倒的にスピードが速いだろうし、効率が良いのは想像に難くありません(それが資本主義の良い所)。今までのセンター試験のままなら、高校の授業や過去問25年分などをやっておけばある程度対策できましたが、そういうわけにはいかないでしょう。しかし金持ち有利なのは今だってそうですから(スマホゲームで課金しまくる相手に課金なしで勝てるはずがないのと同じ)、入試が変わってますますそうなる、くらいのものです。
この入試改革、色々ツッコミどころは満載です。「一点刻みはダメだ!」といいつつ、記述問題は段階評価ですがABCD評価をするにしたって実力順になるのは変わりません。「記述問題じゃないと実力ははかれない!」といいつつ、今までも国立二次は記述式だし、センター試験の問題はそうとう良く考えて作られているのでちゃんと学力順に点数がとれるようになっていました。
入試制度にたいする問題意識がこの改革のスタートなのではなく、改革したい人が「改革するぞ!」と言ってしまった手前、現行の制度に無理矢理いちゃもんをつけて、なんとか改革したように見せたいだけなのでは?と私には思えます。
今回の発表が最終的な決定ではないにせよ、「今までのように数学の難問を解けるようにならなくてもよい」とか「難しい英文の構造を読めるようにならなくてもよい」とか「その代わり、英語は海外旅行で流暢に会話できるようにならなくてはいけない」などのように、受験生がとる対策が変わることはないでしょう。日本人が、ものごとを大きく改革するなんて無理です。それこそ、GHQが乗り込んできて「日本ノ受験ハ、イケテナイ。メリケンミタイニ、タクサン入学サセテ、卒業シボリコムノガイイ!メリケンファースト!メイクアメリカグレートアゲイン!」とか言い出さない限り、変わりませんよ。
ただ「入試制度が大きく変わります!」とか言って学生をあおって、金儲けする企業はあるでしょうね。うちもなんかやろうかな。笑
国語と数学、記述式3問 大学入試新テスト実施案 :日本経済新聞
大学入試新テスト実施案:英語、全都道府県で複数回 - 毎日新聞