月刊木村:清須市で営む塾での日々

相伝学舎という塾を経営しています。好奇心の格差時代に、大学受験を通じた成功体験の場を提供することが使命です。

阿寺川で岩石観察

昨日は農学の香りを楽しんで頂きましたが、今日からまた地学押し売りをさせてもらいます。

先日、長野県にある阿寺川に行きました。とても綺麗な川で一般の人がいったら「綺麗」「気持ちいい」の二言で感想が集約されてしまうところですが、私の興味はどういう岩石が落ちているのか、そこから推測できる地質は何かです。

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とはいえ一言目に出てくるのは「綺麗」です。川を形成している岩石はぱっとみ分かりませんが、左側の岸をみてみると砂礫が集まっているので鉱物粒子からなるなんらかの火山岩体なのだろうと予想出来ます。ところどころ黒いので泥岩などもあるのかも?

落ちている石を観察してみます。

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いきなり難しい。実はこの日ハンマーがなくて、岩石を割れないので表面からの観察しかできませんでした。礫岩か、凝灰岩だと思います。


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これも難しい。さっきの石に似ていますが、鉱物粒子が流れているような感じがするので流紋岩か。


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これは流紋岩に見えますが、凝灰岩かもしれません。


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これも流紋岩か、黒っぽいので安山岩かもしれません。中学で習う火成岩として

火山岩(地表近くでマグマが固化したもの):玄武岩、安山岩、流紋岩

深成岩(地下深くでマグマが固化したもの):斑れい岩、閃緑岩、花崗岩

をこの並びで覚えている人も多いと思いますが、火山岩は右側のものほどSiを多く含みます。Siが多いとマグマとしては粘り気が強く、色は白くなります。

この岩石は白い鉱物(たぶん長石)が流れているよう(流理といいます)で、全体が黒っぽいので安山岩ではないかと推測しました。

岩石は性質を暗記するだけだと退屈ですが、性質を暗記した上で自然の岩石を観察すると一気に楽しくなります。

 

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これは長石、黒雲母の粒子がはっきり分かる花崗岩です。↑の写真より1kmほど下流で見つけました。全体的に赤みがかっているのが紅廉石(こうれんせき)に似ています。

シリカは本来無色透明ですが微量の元素を含むと色がつくことがあります。この石もMnなど鉄元素を微量に含んでいるのかもしれません。

 

観察していて目にとまったのは、岩石のなかに岩石があるようなもの。
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これ、捕獲岩じゃないでしょうか?以前、福井県立恐竜博物館で展示されていた捕獲岩に雰囲気がよく似ています。

捕獲岩とは、マグマが上昇する過程で周囲の岩石がマグマ中に落ちてきて、沈み込まずにそのままマグマと一緒に上昇したときに出来ます。

 

2022.11.6追記

捕獲岩ではなくて、凝灰角礫岩か断層角礫岩の可能性のほうが高い。

2022.11.14追記

普通に礫岩かもしれない。

 

全体的にはSiに富むマグマからなる岩石が多く見られたので、この周辺の地質は火山活動による火山岩や凝灰岩からなると考えて良さそうです。一応答え合わせとして地質図を確認しておきます。

デイサイト・流紋岩とあります。デイサイトは流紋岩と安山岩の間の岩石です。

大規模火砕流とあります。↑で凝灰岩か迷った岩石は、凝灰岩の可能性が十分ありそうです。

 

下流付近は花崗岩でした。

 

だいたい、観察通りでした。満足満足。




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