福井県立恐竜博物館に行ってきました。娘が行きたいと言ったというのが口実ではありますが、日頃から恐竜や化石の図鑑、恐竜のフィギュアや色々な岩石を与え続けているので娘が行きたいと言い出すのはもはや私が送り込んだトロイの木馬のようなものです。
この博物館、展示がかなりexcitingです。子どもがいったら絶対に楽しいです。
福井県には手取層という中生代(1億年以上前)の堆積層があり、そこから恐竜化石が産出します。日本で中生代の堆積層というのはかなり珍しいです。知多半島なども堆積層ではありますがこちらは1700万年前と新しい。
私が子どもの頃は「フクイリュウ」という草食恐竜しか図鑑にのっていなくて、「日本の恐竜は草食しかいないなんてダサいな」と子供心に思っていましたが、今は発掘が進んでフクイラプトルという肉食恐竜も見つかっています。
肉食恐竜は迫力があります。目の裏の空洞はアゴを上下する筋肉があった場所です。噛む力が強いということです。(たぶん)
とはいえ私は恐竜よりは岩石派。恐竜の展示はさっさと見終えて、家族達も私のペースを乱すので「もうあとは自由行動で」といって妻&子ども2人を置き去りにして岩石コーナーを徘徊していました。
こちらはアルミノシリケイトという同じ化学組成なのに温度圧力条件が異なることで結晶が変化するいわゆる「多形」の展示です。大学受験では地学の入試で頻出です。
温度圧力条件で紅柱石、珪線石、藍晶石という3つの鉱物に変化します。これらの鉱物を見つけると、「低温低圧状況で結晶になったんだな」などと推測できます。
変成岩コーナーです。これは花崗片麻岩。花崗岩は斜長石、カリ長石、黒雲母、石英からなりますが、高温高圧の状況になるとカリ長石以外は鉱物が細粒化します。
というわけでこのピンク色の大きいやつがおそらくカリ長石。
こちらはペグマタイトといって、花崗岩を構成する粒子が普通の花崗岩より大きく結晶化したものです。
普通、深成岩の鉱物粒子はルーペを使わないとじっくり観察できませんが、ペグマタイトは肉眼ではっきり観察できます。
安山岩の柱状節理です。マグマが冷え固まるときに柱のような割れ目になります。東尋坊が有名です。
こちらは捕獲岩(ゼノリス)といって、マグマが上昇するときに周りの岩石を捕獲して上昇することで、岩石のなかに深部の岩石が混ざったものです。
こちらは層状チャート。チャート(chert)とは遠洋プランクトンである放散虫(シリカ質の殻を持つ)が遠洋で堆積してできた岩石です(厳密には放散虫以外でもチャートは形成される)。
チャートが形成されるのはかなりの深海です。というのも普通海の底には生物の死骸が堆積するのですが、ある深さを超えると生物の死骸となる炭酸カルシウムが溶けてしまって残りません。そのような深さを炭酸塩補償深度CCD (carbonate compensation depth)と言います。受験生にとってはcompensate 埋め合わせする、で有名な単語です。
このチャート、遠洋で堆積する割になぜか層状になります。層状になるということはチャートが他の地層と交互に堆積するということを意味します。チャートしか堆積しないはずの遠洋でなぜ交互の堆積が発生するのか?大変興味深いことに、ミランコビッチサイクルという数十万年単位での地球の寒冷化リズムが影響しているという説があります。
層状チャートの断面です。こんな風になってるんですね。
化石コーナーです。化石は実物をよく観察しておかないと、実際に泥岩を割ったときに見逃す可能性が高くなります。こういう予習が大切です。
こちらはデスモスチルスという新生代第三期の有名な示準化石です。岐阜県瑞浪市で見つかっています。
これはデスモスチルスの歯なのですが、化石のなかで最もグロテスクだと私は思います。
なんか進行しきった虫歯みたいで気持ち悪いです。
普段は図鑑や資料集で歯の正面からしか見ることができませんが、ここは博物館。横からも観察できます。
ますます気持ち悪いです。
それにしても良い展示でした。岩石コーナーは知っていることばかりですが、こうやって展示されると知識が整理されてとても勉強になります。
しかもこの博物館、これだけ展示が充実していて大人730円。
日本って博物館安すぎませんか?海外がどうだか知りませんが、水族館や動物園と比べると刺激される知的好奇心の量の割にコスパが良すぎます。